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著者 渡邉 格
出版社 ミシマ社
発行 2021/5/28
現在、鳥取県智頭町で「タルマーリー」という、自家製酵母と国産小麦でパンやビールを製造販売する店を営んでいる著者夫婦の、約20年に及ぶ歩みを語った本です。
31歳からパン屋修業を始め、千葉県で最初の店を開いたのが2008年のこと。それから東日本大震災を機に岡山県に移転、そしてさらに、野生の菌だけで発酵させるクラフトビール作りのために現在の智頭町に店を構えたのが2015年と、まずはその移転の目まぐるしさに驚きます。しかし、それもこれもすべては、野生の菌とおいしい水を求めてのこと。
タルマーリーのパン作りに欠かせない「麹菌」の入手は、蒸したコメを竹筒に入れ、ひたすら菌がそこへ降りてくるのを待つことから始まります。
そして「野生の菌」の能力を引き出すためには、発酵を科学者が実験室で行う「因果」で考えるのではなく、自然環境や労働環境のすべてが複雑に絡んでいる「縁起」でとらえることが必要だと著者は言うのです。発酵で大切なのは、菌を統御することではなく、その動きに沿うことだと。そのように、ひたすら菌の動きに沿いながら独自の味や働き方の試行錯誤を続けてきた日々が語られます。