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著者 小山田浩子
発行人 ignition gallery
発行所 twililight
発行日 2022/5/29
2020年7月~12月の半年間、日経新聞夕刊に毎週連載したコラムをまとめた、広島市在住の芥川賞作家・小山田浩子初のエッセイ集です。「パイプの中のかえる」とは「井の中の蛙」の著者流の表現。
著者が東京ではなく故郷の広島市在住というのは、その土地の暮らしの風土の中で書くということになるのでしょうか。出来事をすぐに一般化しようとしない語り口というか。
話題は方言をめぐる話や、テレビの内容や近所付き合いでの一コマなど、日常的なことを取り上げているのですが、だからといって「あるある」や「ほっこり」で終わらせるのではなく、あくまでそれらを手持ちの言葉によって掘り下げていきます。
たとえば「知り合いの男児(6歳とかそれくらい)が『おんなはうんこもおならもせんのんよー』と言っているのを聞いた。」ではじまる「女はしない」という1篇。多くの人にとってただ通り過ぎてしまうだけの場面をピンで止め、そこからの著者の思考の跡が、読み手の心にくっきりと残る内容です。
ちなみに、あとがきにあたる文章で著者は「女はうんこしないと発言した彼は最近あまり話をしてくれなくなったが挨拶はしてくれる」と書いています。